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2006.08.09

(序)チーム全体の勝利&地区全体の結晶

 F津君の肯定側第二反駁のスピーチが終了した後、会場から割れんばかりの拍手が、しばらくの間鳴り止まなかった。僕の周辺で何人かがディベート甲子園の感想として「今までの高校決勝でこのような場面はあまり記憶にない」と表現されている。

 ディベートとは、相手を言い負かす競技ではない
 ジャッジを説得する競技だ。

 ところが今年の高校決勝では、ジャッジのみならず、それを聞いていた聴衆までもが説得させられたのではないだろうか。
 聞き手の誰をも説得する・・・つまり、ジャッジが誰であろうと、理解して頂けるディベート!
 「否定側に投票するジャッジは、この拍手を覆すだけの理由を提示できるのだろうか?」と僕は思った。だが、確信がなかった。理由が2点。1つはその日、僕は肯定側立論の改造を手伝ったので、既に客観的にどちらが勝ったかを判断できる心境になかった。もう1つは、ジャッジが主張をどのように受け取るのかはジャッジ次第であり、個人的(主観的)な勝敗の判断は必ずしも正しくはない、ということを十分に知っているからだ。(この点に理解がなく、11回も経ったこの大会でさえ、試合終了後に、ジャッジにクレームをつける選手がいたという。教育ディベート界もまだまだ至らぬ点があるということか…)

 だが、やはり私の予想通りの結果となった。いや、予想以上だろう。
 5-0で肯定側の勝利。
 「ああ、やはり、このような試合展開の場合、大方のジャッジは肯定側に投票するのか。」…ジャッジと聴衆との認識が一致した試合と評価したい。

 僕は、会津高校の保護者と一緒に座っていた。F木君のお母さま+お姉様、F津君の御両親とは、既に何度もお会いしていて面識がある。ほかにも保護者の方が何名か上京して下さった。河東中も含め、ディベートへの取り組みが保護者からも理解されていることが、会津勢の強みだ。
 そして試合終了後、話題は既に、あの話題に移っていた。
 「ベストディベーターはやっぱりF津君だよね」

 F木君とF津君は共に、3年前の中学決勝の舞台を踏んでいる。
 その時には、青雲中のメンバーに敗れて準優勝だった。
 F木君は後日、指導をされた藤田先生の所に行き、1時間泣いたそうだ。相当悔しかったらしい。ただ、その悔しさが、その後、ディベートを続ける原動力になったのかもしれない。「その前年に優勝したメンバーが誰一人高校でディベートを続けなかった中、F木君がディベートを続けたのは、そういった経験があったからではないか」と、今年河東中学校に練習試合にいった後の、会津若松の飲み屋で藤田先生から聞かせてもらった。
 F木君はその後、福島県でも進学校で有名な会津高校に進学する。でも、ディベーターの仲間に恵まれず、高1の時には地区予選にも参加できなかった。ただそれでも、神田外語大での全国を見学しに来た。その時、同じ東北地区の能代高校が、全国の決勝に進出した。既に「東北地区はみんなで強くなる。全国で対戦することになったら恨みっこなし」という実践を続けていた僕たちは、能代高校の控室に集まり、対戦する創価高校の対策を練っていた。学校が違っても選手の関係者だ(爆:だって能代のみんなもそう言ってくれたし…)そしてF木君も能代高校の控室にいた。「地区の代表校が結束して高め合って全国を戦うっていいですよね。『この輪に選手として加わりたい』と思ったんです」と、その次の年F木君は僕に語ってくれた。嬉しい。既に地区の取り組みの素晴らしさを感じてくれているのか、と僕は思っていた。
 その翌年、前年中3で、残念ながら地区予選で敗退したF津君は、会津高校に進学する。F木君は喜んでいた。ただ、大きな関門が2つあった。そのうち1つの壁は、思いもよらぬ形で開かれた。ディベート甲子園ルールの改正があり、2人でも大会に出場できるようになったこと。会津高校は選手が4人揃わなくても、FFコンビの2人だけで出場できることとなった。もう一つは学校の体制だ。F木君は『社会弁論部』に入部したが、そこでディベートの取り組みができるようになるまでに幾つか困難な事があった。僕、そして江間支部長も苦心したが、F木君の保護者などの力添えで、『社会弁論部』がディベートの取り組みをすることが認められた。更に付け加えると、福島県では会津若松第二中学校の活躍のおかげで、テレビや新聞等でディベートが取り上げられる機会が多く、当時からディベートの認知度が高かったことも見逃せない。

 さて、このような困難を乗り越えて今年、会津高校は更に、会津若松ニ中と河東中学校から優秀な後輩を迎えいれて、全国の決勝まで勝ち上がってきた。話を戻すと、3年前に青雲中に敗れた際のベストディベーターはF津君だったのだ。F木君は当時のことを冗談混じりに「F津君に持って行かれましたから~」と言う。
 また、あるところで行なわれたディベートセミナーの後、講師の筑田先生に対して当時中学生だったF木君は「どうしたら全国大会でベストディベーターになれますか?」と質問をしているくらいに、実は昔からこだわっていたらしい(笑)筑田先生もそれを「すごい中学生がいるもんだ」と、特に印象に残っているのだと語っている。

 奇しくも、その3年前に対戦した青雲中のメンバーは、青雲高校でもディベートを続けていた。昨年の全国では「決勝での直接対決の再現」があり得たのだが、会津高校は準決勝で優勝校に敗れた。その青雲高校のメンバーと、会津高校のメンバー、そして僕及び本校のメンバーが今年、同じ宿だったというのもなんたる奇遇(本校は会津の宿をF木君のお母さまから聞いて予約したので、同じ宿なのは当然なのだが(^^;)。
 また別の観点で言うと、その青雲高校のS口君、A田君も、会津高校のF木君も、Project of Debate Lovers」の一員として、大会2日目の選手交流会を盛り上げていた。ライバルの垣根を越えて交流している彼らに拍手を送りたい。

 再び話を戻して、今年の全国の決勝を見た人の多くが「でも、やっぱりベストディベーターはF津君でしたよね」と言うと思う。今年卒業するので来年にチャンスのないF木君には本当に申し訳なく思うが(^^;、客観的に見て仕方がないだろう。

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 ただ、僕が今回、頑張って、こちらのBlogをご覧の皆様、更にはこちらのBlogを見ていない全国の中高生ディベーター及び指導者の皆様にも、どうしても伝えなければならないことがあるのです。

 F津君のベストディベーターは、F木君の第一反駁と、そして、F木君が準備時間に見せた素晴らしい才能に支えられています。F木君あってのF津君のベストディベーター賞だったのです。
 更にはK村君の「失敗だったかも?」と思わせる“かみ合っていなかった肯定側質疑”が、、チームの勝利に貢献していたのです。(失敗になったのは、僕の助言に誤りがあったのが原因であったこともあらかじめ書いておきます)
 そして実は、試合直前に修正した上に2,600文字以上あった文量の多い立論を、読む練習が少ない中、聴衆に分かるだけの形で読みきることに成功したH田君の“立論を読みきる稀な能力”が、今回の勝利の元となっています。

 つまりは、今回の勝利は、ディベート特有の「チームの勝利」だったのです。
 このことに気付いていた方は、ジャッジの方々のほかにどれほどいたでしょうか?

 そしてディベートは、チームで一貫した主張ができた時に強いし、そしてやっていて楽しいのです!

 たまたま僕が、裏方も手伝ったので、この貴重な勝利の意味合いを更に深く理解出来ました。これを伝えられるのは、僕しかいません!

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 一番最初に話を戻そう。(表現も“である体”に戻しますm(__)m)
 高校決勝後に拍手をされた方が、どうして拍手をしたのか、考えてみてる。
 肯定側第二反駁が劣勢を覆した点が、感動を大きくしたのではないだろうか。
 ディベート的に見ると、デメリットが生じるという否定側の一理ある主張に対してもなお「プランを導入する意義=論題を肯定する理由付け」が、頭の中でイメージできたからだろうか。
 会場には「ディベートの横綱、創価高校に勝っちゃうのかも…」と、ディベート勢力図的な世代交代のようなものを感じて拍手した人もいるだろうと僕は予想する。

 そのような様々な理由からも、F津君のベストディベーター賞受賞は、誰もが納得の行くところだろう。

 だが、全国の中高生ディベーターに改めてお伝えしたい。
 「(チームで最後にスピーチをする)第二反駁が上手であれば勝てるんだ」とか「ディベートを極めるべく、2反の担当を目指す!」といった、安易な誤解&安易な目標設定は違うのだ。

 なぜ違うのかは、もう少し時間をさかのぼり、(1)僕が当日の朝5:00以降何を助言したのか、(2)彼らがどんな準備と考えをもって決勝に望んだのか、そして、(3)東北地区の中高生ディベーター&ディベートに関わる指導者&OBOGの全体が、2002年1月以降、どのような取り組みを継続させてきたことが、彼らのスピーチとどのように関わっているのか、を説明せねばなるまい。

 今回、東北ディベートネットワークの同意を得て、その取り組みを公開する。それにより、中高生ディベーターのスキルの向上は、実はどの地区のどの学校でも可能であるのだと、ご理解頂けるだろう。
 なお、会津高校に何を指導したのかを公開するという件は、会津高校の面々には了承を得ていないが(^^;、恐らく彼らはOKを出してくれるだろうし、僕が当日した指導も自分の高校に対する指導と全く同じことをしたのに過ぎず、結局は本人たちの努力の賜物であったことは揺るがない事実であるので、後日許して頂くこととしよう。

 この夏休みの時間のあるうちに、そして、この感動が薄れる前に、当Blogで連載を終えたい。
 今後皆様には、しばらく連載にお付き合い頂けると幸いである。m(__)m

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コメント

こんにちは!全国大会お疲れ様でした!!

私は決勝戦を否定2反、肯定2反だけ見たのですが
それだけでも十分会津高校サンの勝利を確信できました!!
試合終了直後にあれほどの拍手がおこるのは珍しいですよね。

今回の優勝は会津高校サンのすばらしいチームワーク、
そして論題に対する深い理解の賜物だと思いました。
やはり努力に勝るものはないですよね。
そしてベストディベーターに輝いたF津君。
あれはもう「F津節」とでも言いましょうか。笑
F津君にしかできない「喋り」だと思います。

OGになって全国大会を見て感じたのは
東北のディベーターは高校生らしい素直なディベートをしているなぁということです。
見ていて楽しいし、気持ちいいです。

これを機に東北のディベートがますます盛んになればよいと思います!!

投稿: 大塚あさみ@能代OG | 2006.08.09 17:50

僕もあの試合には感動しました。
確かに、肯定二反は素晴らしいと思いました。
しかし、個人的には肯定一反のあの仕事が無ければ優勝はありえなかったと思います。

僕個人としては肯定一反のF木さんにベスディを与えたかったです。個人的には、会津の強さというのは全体のチームワークの良さだと思います。

ディベートって一人でも駄目だと成り立たないんですよね。4つのパートがそろって初めて成り立つものだと思います。

確かに、肯定二反のF津君もすごいと思いました。
ただ、F木さんはもっとすごいと思いました。F木さんってすごく地味な感じはするのですが、すごく丁寧でわかりやすいんですよね。僕もああいう風になれるようにこれからは頑張りたいと思います。

PS.やっぱり肯定一反の3分反駁、1分再反が個人的にはすごく感動的でした。

投稿: 須田@早大学院 | 2006.08.09 21:17

私も肯定一反が隠れた立役者だと思っていました。反駁に3分も使って大丈夫かなと心配しましたけど。創価は相手の立論を徹底的にリサーチしてベストな反駁をしてくるので肯定一反にとても興味がありましたがお見事でした。2004年に創価と決勝トーナメントで対戦した時には「相手がリサーチしていない立論で奇襲攻撃しよう」と初出の立論を使ったことを思い出しました。確かに一反は封じました。結局ベストディベーターの二反に敗れましたけど(^^;) その試合は1-2で惜しくも敗れてしまいましたが、生徒たちには「勝ち負けなんかどうでもいいよ。これまでで一番いい試合ができたよ」と生徒を誉めたことを思い出しました。

投稿: 江草乗@明星顧問 | 2006.08.09 22:35

>大塚さん
 去年実際にFFコンビと試合をしている大塚さんですから、尚更彼らのすごさを実感できていることでしょう(^^;
 OBOGになると、急に視野が広がるのではないかと思います。是非それらを、後輩の指導に活かして下さい。
 そして、東北での更なるディベート普及のために、大会や企画を、是非スタッフとして手伝って下され~(^^)/

>須田君
 さすが目のつけ所がGood!!です。玄人ですな(^^)
 同じラバーズ仲間のF木君の良さを分かる、あなた自身が素晴らしいと思います。
 是非ともお互いに、“聴衆に理解と感動を与えるディベート”を目指しましょう(^^)/

>江草乗先生
 今回は対戦をありがとうございました。m(__)m
 F木君の1反のすごいところは、(1)かみ合わない質疑の後の準備時間、合計3分という僅かな時間で戦略変更に成功した (2)しかもその戦略に自信がなかったのに4分のスピーチを全うした (3)その中で重要なカードチェックに成功した などです。連載の中で明らかにします。
 彼らは全員で、F津君の結論を引き出す道筋を備えたのです。すごいです。ディベートの醍醐味がここにあります。
 よろしければ、今後の連載にもどうぞコメントを下さい。m(__)m

投稿: NAKO-P | 2006.08.10 08:17

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