「ディベートは難しい」「中々勝てない」「地区予選で勝ちたい。全国でも他地区の学校と対等に渡り合いたい」・・・ディベートとは、やればやるほど、勝ちにくさに苦しむ競技だと思います。かく言う本校も、昨年、今年と全国で1勝もできてませんし、勝ちにくさに苦しんでいる立場です…(T_T)。
「3-0で負けた」「1-2で負けた」…「どうしたらジャッジに投票してもらえるのか?」・・・悩むのは当然だとは思うのですが、だからといって相手側に投票したジャッジに「どうしてこの議論を採ってくれないのですか?」と文句を言っても、勝敗は覆らないし、全くもって建設的ではない・・・どころか実は、文句を言っているチーム及び選手は、ディベートに関する肝心なところを理解していないと思われます。だから勝てないのでしょう。
では聞きますね。ジャッジに「なぜ僕等の議論を採らない?」と文句を言うあなた。
「あなたたちはチームは、勝つためのスピーチが出来ていたのですか?」
「=どの部分をもってジャッジに『勝ち』と投票して欲しかったのですか?」
…それを言えないくせにジャッジにはいっちょまえに文句を言うのであれば、
チームとしての無責任さを自覚した上で、顔を洗って出直して来たほうがいい!
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「そんなキツいこと言わないで下さいよ。それが分からなくて困っているんですよ!」
…という皆さんには是非知って欲しいディベート用語があります。
戦略(ストラテジー:strategy)
「…? 初めて聞きますが…」という人もいるかもしれませんね(^^;。
具体的にはこちらを御覧下さい。
『反駁の方法 by 岡山洋一(2000.5.18)』
ここに、大切なポイントが書かれています。
>1-3 反駁で出てこなかった議論は、審査の対象にならない?
>主要争点を見極め、それを伸ばし、引っ張る。反論されたら、反駁するというようにしないと、勝ちには結びつかない。つまり主要争点の戦略的選択が重用なのである。
>6 立論、質疑の役割
>各反駁での役割を説明してきたが、ここで、立論、質疑の役割にも簡単に触れておく。反駁の戦略が決まれば、おのずと立論の作り方が決まるからであり、また質疑で何を聞くかも決まってくる。よく立論を作って準備終わり、また立論を作るだけで精一杯というようなチームを見る。つまり立論から作り始めているのである。これは間違いで、極端に言うならば、第2反駁から考えていかなければならないのである。つまり肯定側なら、どのメリットでどのようにデメリットと較べ、どう優位性をつけ、どうやって勝ちにつなげるのかをまず考える。そうすることによって、おのずから立論、質疑でどうするのかが決まってくる。つまり逆に第2反駁から考えていくのである。
ディベートの指導者の間で『逆算のディベート』と呼ばれる考え方です。
(これが2000年のテキストですから。今2006年ですからね!ディベート自体についても幅広く勉強しましょう!)
また、戦略(ストラテジー)は、ESSなど、大学でアカデミックディベートをしている方々にはよく知られている用語です。目上の方からディベートを学ぶ際には是非、聞いてみて下さい。
関さんのテキストにも書かれています。これを機に参考に御覧ください。
つまり戦略というのは、立論→質疑→第一反駁→第二反駁という流れでチームのスピーチが終わった時に、ジャッジが納得して投票してくれるような結論が述べられるようにするための手順、という感じです。
実はそれは、試合の場で閃くようでは遅くて、あらかじめ想定し、準備しておくべきことなのです。
#但し、試合展開に応じて、臨機応変に対応する必要もあります。
#何故かと言えば、ディベートとは相手がある競技だからです。
#相手に応じて最良の選択がその場でできるることも“強さ”です。
改めて聞きます。
ジャッジに文句を言うディベーターは、試合前にどのような戦略を準備していましたか?ジャッジに納得してもらうためのスピーチが編み出されていて、それを実際に試合中に、ジャッジに伝えることができましたか?
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戦略の意義に理解して下さってもなお、下記のように嘆くディベーターがいるでしょう。
「第二反駁がうまくできないんですよ~」
「議論の比較・まとめってどうすればいいんですか?」
岡山先生は、事前に戦略を考えることを勧めている。こちらのページをご覧下さい。
更に具体的な第二反駁のスピーチについての提案と事例については、駿台甲府高校OBの曽根君が書いたテキスト『第2反駁講座』が公開されています。是非御覧ください。
そして今年の私は、みんなと同様に第二反駁について数年悩み続けた結果、あるシンプルな方法に行き着いたのです。
これは、東北地区高校代表校合同合宿での出来事でした。能代高校の2反担当のI君が、2日目の夜に僕のところへ質問に来ました。
「第二反駁で何をしゃべっていいのか分からなくなった。さっきはスピーチはしたが、実は頭の中が真っ白で、自分で何をしゃべったか覚えていない。こんな経験は初めてだ。今までの部内試合では、1反の有効性をとってもらっていたケースが多く、2反はしゃべるだけで良かったのだが、ここにきて2反が大事だと痛感した。どうしたら良いのか?」
しゃべることが思いつかない中で、2反の役割を果たすべく、何をしゃべるかをどのように考えたら良いのか?
ここで私は、“あまり考える必要がなくて、かつ有効な方法”を閃いたのです。
「ラベルだけを並べて比較しよう!」
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具体的に考えてみましょう。
そしてそれが、大会当日の朝、会津高校に“提案”したことである。(ということで、ここから“である体”に戻ります)
会津高校のメリットは「地域主体の行政の実現」
創価高校のデメリットは「公共サービスの低下」
ここでラベルについて。ディベート甲子園のガイドラインでは「メリット/デメリットはラベルで示す」となっている。
かつ、ラベルは、立論全体の中身をきちんと表しているはずだ。
#立論の中身とラベルがズレていると、ジャッジがメリット・デメリットを評価しずらい=負けやすい、ということがありますのでご注意を。
中身を丸ごと表しているラベルだからこそ、それらを単純に並べて考えるのだ。
「『公共サービスが“仮に”低下』してもなお、『地域主体の行政を実現』させるべきなのです。なぜなら~~(以下“ジャッジを説得させる”理由を述べる)~~。」
ここで大事なのは、上記の“ジャッジを説得させる”理由を第三者が聞いた時に「一理ある」と頷いてもらえるような理由を述べることである。それができなければ、到底論題を肯定も否定もできないのだ。ジャッジというのは、双方の議論に公平に耳を傾ける善良な大人の一人、と考えるべきだと僕は思う。(だから尚更、“善良とも公平とも思えないジャッジ”に対してではない限り、ジャッジに文句を言うディベーターの気持ちが理解出来ない。)奇数人いるジャッジの多数派が、チームの主張に「一理ある」と頷いてもらえないと、投票してもらえないのだ。
かといって、投票してもらうのはそう簡単ではない。
かつ、相手の議論が一理ある強いものであるならば尚更だ。
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投票してもらう理由を探るためにやるべきことは、相手の議論を理解することだ。
前回書いた『●○』で考えてみる。あらかじめこの手法を会津高校のメンバーには伝えているので、当日の朝は話が早かったのだ。
○…現状を維持すれば、弱者に対するサービスが、国の責任で維持される。
↓…道州制によって格差が生じ、サービスが維持できない状態となる
●…社会的弱者を切り捨てることは深刻
当然、一理あるストーリーである。嶽南亭氏が決勝の講評で、実際に道州制を議論する社会的な場でも、否定側のスタンスが持ち出されて議論されているのだ、と紹介されている通りである。
この真っ当な議論を崩すには、どうすればいいのか?
ここで、僕が大会中に入手した全日本ディベート連盟監修・久保健治+関真一郎+天白達也著『ディベートワークブック~練習問題で学ぶ・はじめてのディベート』に、きちんと答えが書いてある。
p.82より引用開始
「反駁のコツ
(中略)
ようするに、反駁の際には常に、3要素(否定側なので発生過程、深刻性、固有性)の中で、どこの証明や説明が不足しているのか、つまり弱いのかを意識して反論すればいいのです。」
引用終了
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…でも、そう簡単に弱いところを見つけられるものでもない(^^;
そこで更に、相手のデメリットを深く理解する作業をした。
ここでまず、デメリットが最大でとても深刻だと言える状況とはどのような状況なのかを考える。
-国が道州に分けられると…
デ|
|→幾つかの州が財政的に弱くなる(←財政が豊かな州はDに至らず)
メ|
|
リ|→企業誘致のため、税を下げるなどで歳入が減る
|
ッ|
|→結果として赤字となる(←企業誘致に成功した州はDに至らず?)
ト|
|
が|→行政がサービスを低下させるという判断を下す(←増税などの別な道もある!)
|
最|→そのサービスは住民に直結するサービスだ!(←別なサービスを切ればDは小)
|
大|
-→とっても深刻!
つまり、まずは相手のデメリットが仮にその通りであればとても深刻だということを認めて、一旦自分の中で受け入れて、そうなる理由(根拠付け)を確認し、「とっても深刻」に至る条件を一つずつ否定することによって、段階的にデメリットを削ることが可能であることを確認した上で戦略を考えるのだ。なお、このように段階的に否定することによって“必ずしも深刻な状態にならない”という反駁(第一反駁及び第二反駁)をすると、聞いている側のジャッジにも分かりやすいし、少なくともは「否定側の言う通りの酷い状態になる“とは限らない”」と思ってもらえるだけでも、有利に試合を展開できる。
更に『●○』を使うなら、もっと決定的にデメリットを削る戦略を考えることが可能だ。
レジメにある「反駁の方法の1番め」=「○は、実は元々●だった」というもの。
それは、
●…国もいずれサービスの維持ができない状態となる。
↓
●…「道州制での社会的弱者の切り捨て」で言う深刻性は“差分のみ”
… … …
結論として、提案した“戦略”は下記のようなもの。
- 現状を維持しても国のサービスは低下する。なぜなら、国は現状でも赤字で、財政のバランスを保つには消費税を20%にアップする必要があるくらいだからだ。
- 発生過程の試算が、肯定側のプランに合致するとは限らず、赤字からのサービスの低下が起こるか否かは不明
- むしろプラン(法人税を国に)で、財政的な格差は縮めることができる。
- 更に道州制で、コスト削減が可能なので、赤字は埋められる。
- 仮に赤字になった場合に行われるサービスカットは、まずは住民等への影響の小さいものから。(=サービスのスリム化)
- それでも赤字が大きい場合に、住民に密接するサービスを停止することを行政側は判断するのだろうか?
それ以前に増税も検討されるだろう。
- どちらかを自己責任で選べば良い。むしろ選べることが重要。実情に見合った行政が可能。
その際、赤字が埋められた後で検討されたサービス低下及び増税なので、その負担が大きいとは考えにくい。
- 結果的に生じるものの、自発的に選んで発生したデメリットは深刻ではない。
- 結論:現状維持よりプラン後の方が良い
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この提案をした段階で、F津君は、「つまり2反では~~~~とスピーチすればいいのですね?」と、得意の“F津節”で2反の原案を語ってくれる。
それに対してF木君が「F津君はすごいよな。よくそんな言葉がポンポン出てくるよね」と感心する。読書家で雑学に詳しいF津君のすごいところは、語彙(ボキャブラリー)が豊富なところだ。
僕はそれ以上に、このワンシーンに感動した。
- F津君は“2反の原案”という形で、こまめにスピーチ練習をしている形式になっている。
- それをチーム全体が聞くので、チーム戦略に対して共通認識を持つことができる。
- 「F津君がああ言ってくれるはずだから」ということで、1反も質疑も立論も、同じ戦略に基づいたそれぞれのスピーチをすることができる。
素晴らしい。来年はこれを活かす!
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なおこの段階で、私の戦略の提案・指導が、誤りであったことに気付いている人も多いだろう。創価高校の否定側立論には「道州が赤字になる」という要素がないのだ。
…いや、本当は証拠資料で「税率を低く設定すると歳入が減る」とあるので、暗に税収不足が関係あるはずだと僕は思っている。
でも、創価高校の否定側に「道州の赤字」がないことは、試合時の質疑応答で立論者が頑張って主張していたことだ。
この指導ミスを、会津高校のメンバーは挽回してくれたのである。
僕はそれに感謝しているし、だからこそ、誰よりも更に感動しているのである。
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